リーマンジャズドラマーのブログ

サラリーマン兼ジャズドラマーの思うところ

ロンドンのジャムセッションはここが違った!(後編)

 

pagos-bucci.hatenablog.com

前編から)
最初に呼ばれたドラマーは常連と思われる人で、速い演奏が爆音で始まった。演奏が終了した瞬間にアンディはご機嫌MCを入れていく。とにかく流れを切らさない。
2曲演奏終わって、ドラマーが動く気配ないので「アンディ!俺叩いていいか」とMC合間を狙ってアピール。
「ステイステイ」まだ待っとけ、と。
3曲終わって、まだ動く気配ないので「アンディ!」と。もう0時ぐらい。次の日も朝8時半集合でビジネス仕事があるので、さすがに外国の知らない街に夜通しいるわけにもいかない。
とは言えロンドンまで来てここで諦めるわけにはいかないので「おーい」ってw
しつこさに気付いたのか、チェンジと。サラリーマンスーツ姿なので、こいつは演奏大丈夫かいなと思われたかもしれないね。
半ば強引にドラム椅子を取りにいき、相変わらずアンディは聴衆を惹きつけてバリバリMCをしている。曲は日本のジャムセッションでされるバップ、モダンあたりまったく一緒。
やはりジャズは世界共通。演奏したい曲もこうまで似通うかとある意味感心。

 

ところが日本のセッションとまったく異なるところがひとつ。

 

参加ミュージシャンに曲を決める権利はなく譜面台も用意されていない。日本のセッションでよくある「何の曲やりたいですか? できますか? キーは何がいいですか」なんてものはない。
バンマスのアンディがMCで場を盛り上げ、ネクスト曲をアナウンスした瞬間そのまま大声でカウント出して突入。

つまり、セッション自体がミュージシャン向けではなく、オーディエンス向けなのだ。

逆に言うと、そこに参加するミュージシャンはMCで言われた曲を譜面なしでカウント指示のみで演奏しきれなければならない。


ジャズのセッションを完全にエンターテイメントとして見せているステージなのだ。
 

客もスタンディングでわーっとそれを楽しんでいる。曲中もずっと同じノリが続くと飽きるのでアンディは上げろとか押さえろとか身振り手振りで指示してミュージシャンは指揮者を見るようにそれを横目で見ながらメリハリ付けて対応していく。

私がドラム椅子に座ったときは、アンディは何かわさわさMCでしゃべった後に「キャラバァ~ンッ!」と叫び、ウノッ、ドスッ、ウノドストゥレスッとスペイン語か何かでカウントを出した。

 

(GoProが壊れてしまい、静止画しかありませんがその時のサウンドです)

演奏中、ドラミングで面白い反応をするとアンディは「イェイイェイ!」とすごく喜んでた。終わると爆音ベーシスト(エレベ)もニコニコしてイェイっと目配せ合図をしてくれた。
これもジャズは万国共通。いいよね。
終わったらでかい怖い顔した白人のでかいおっさんドラマーが代わってと来たので、どうぞ、ってw
深夜なのでMCしているアンディに先に帰るけど楽しかったと握手してお礼を言うと「すごくドラムサウンドがきれいだった」と言ってくれた。日本のジャムセッションもいろいろ行ったけど、この客向けエンターテイメントとして見せるのは皆無。


この視点はありだよな…、と考えさせられました。
 

プロダクトアウトとマーケットインの違いでもなく、客は誰か、に行きつくような気がしますね。
日本のセッションでも聴くだけのお客さんもたまにはいるけど、ステージ内輪で「次何します~?」とかコソコソ相談していると、疎外感は否めないかもしれません。
そんなこと考えたこともなかったけど。

 

セッション一つとっても、いやいやビジネス面でも勉強になりました。

この時の出張は英国企業のエライさんなどと意見交換や議論が中心でサラリーマンとしてはかなり気を遣うパターンだったが、裏目的の「現地で演奏できるか…」の方が私にとってははるかにドキドキのチャレンジなのであった。
私が深夜そんなことをしてたことは同行メンバー数人はついぞ知らない。
帰国してしばらくしてから、実はあの後ね、って言ったら全員びっくらこいでたw

 

誰かこのスタイルのセッション開催しませんかね。。。